スタジオ所属のエンジニアとか言っている割に、その手の話題があまりにも少ないと反省しているので、私が使っている機材のレビューや紹介?みたいなものも少しやってみようかなと思います。
どうしてもスタジオ機材寄りになりがちですので、趣味で取り組んでいる方々のチョイスと必ずしも一致しない部分も有るかと思いますが、そこは一つご容赦頂くとして…(笑)
頻繁にあれこれ買い替えたりということもありませんので、弾数はそんなに無い上にどうしてもタイムリーなネタが少ないんですけれど…。
では早速行ってみましょう!
【機材レビュー】RME / ADI-2 PRO (FS) / オーディオインターフェース(AD/DAコンバーター)
というわけで、一発目はオーディオインターフェース(AD/DAコンバーター)のADI-2 PRO (FS)です!
まさに今が旬と言って差し支えのないメーカー、RMEのインターフェースですね。
(正直に言うと、手元にパッとあった旬な機材がこれだったので…)
現行品は名前の末尾に「FS」がついていますが、私が使っているのはFSの無い時のものです。
兎にも角にも、PCM768kHzと
DSD11.2MHz(DSD256)というスーパーなハイレゾ(CDは44.1kHzですね)に対応しているインターフェースという事がまず挙げられますが、これは2ch専用機のカタログスペックとしては、最高峰に位置するインターフェースの一つになります。
それでいてこの価格(約22万円)というのは、コストパフォーマンスで言えば、他のインターフェースを圧倒している印象です。
ただ、現実的に今の時点では768kHzというのはほとんど使用されておらず、その下の384kHzの音源でさえもかなり数が限られているので、PCMに関しては制作現場からしてもオーバースペックと言えるでしょう。
私も384kHzを扱う現場に呼ばれたりはしていますが、768kHzを実際の現場では使用した事はありません。
DSD11.2MHzは色々やってきましたが。。
基本スペック
対応する最大サンプリングレートはPCM 768kHz / DSD 11.2MHz
入出力は2ch in / 2ch out
アナログ入力はXLR(TRS)
アナログ出力はXLS(TS)
ヘッドフォン出力は2系統
デジタル入出力はAES、SPDIF(コアキシャル、オプティカル)にそれぞれ対応
ざっくりとした基本スペックは上記の通りで、2chの録音再生について、基本的な部分はすべて押さえている感じですね。
超ハイサンプリングなPCMに加えて、DSDも11.2MHzまで対応しているので、この部分に関しては一般的なスタジオ機材を凌駕する性能を持っています!
ヘッドフォンアウトが2系統有ることと、ヘッドフォンアンプもバランス駆動になっているため、ヘッドフォンアンプとしても十二分以上に使えます。
デジタルのI/O部分については、オプティカル以外はブレイクアウトケーブルでまとめられていますが、スタジオではほぼ必須となる、BNCでの外部クロックのイン・アウトはありません。(当然ですが、デジタル端子で受けることは可能です)
外部のクロックジェネレータを使っていて、特にルビジウムなどで10MHzのマスタークロックを生成している環境では、ちょっと悩みどころかもしれませんね。
また、細かい部分ですが、ACアダプターの端子に突起がついており、差し込んだあとにひねることで抜け防止が可能です。
こういうのって地味に嬉しい部分だったりします。
以前、取り回しのし難い、非常に太い電源ケーブルを使わないといけない現場で、ちょっとしたことですぐ抜けてしまって難儀した経験がありますので…。
自重に耐えられない太さのケーブルはダメだと思いますねぇ…現場では怖すぎます。。
機能について
オーディオインターフェースとしては、イン・アウト周りのルーティングの柔軟性と安定性、ノイズレベル、クロックの精度あたりが評価の軸になると思いますが、ADI-2 PRO(FS)の場合は、5バンド・パラメトリックEQ、バイノーラル・クロスフィード、ラウドネス・フィルタ、AD/DAフィルタの切替等々の機能が搭載されているので、音質について直接調整することも可能です。
ただ、スタジオにおいては、基本的にはそういった機能はスルーして使うことが多いと感じています。
レコーディングにしろマスタリングにしろ、通常はAD/DAとは違ったポイントで音を触りますので、出入り口となるAD/DAそのものを使い分けたり、そこでの余分な要素は排除するというスタンスが多いのではないでしょうか。
部屋の音響調整も別のアプローチが多いように思います。
とはいえ、自宅などの場合は、最終的な音の出口として、ルームEQに使用したりすることは普通に有ると思いますので、そうした環境に応じて対応出来るというのは強みだと思います。
また、各種動作モードを切り替えるプリセットも実は実装されていて、縦に4つ並んだボタン(VOL、I/O、EQ、SETUP)にセッティングをアサインすることが可能です。
これにより、インプットの切り替えなどもボタンの2度押しで簡単に呼び出せます。
使用感
概ね良好だと思いますが、操作方法自体は多少独特な印象を受けました。
とはいえ、だいたいどこのインターフェースでも独特なんですけど(笑)
基本的な考え方として、「一系統のin/outを使う機材である」という前提がありますので、そういう意味では実にシンプルな反面、A/D→USB→D/Aという基本の形から外れるような使い方をする場合にはひと手間必要になります。
例えば、チャンネルの動作モード(CC-Mode)という設定があり、USBでのオーディオインターフェースとして使用する際、デフォルトの設定(CC-Mode → ステレオ)ではinputがアナログしか受け付けておらず、デジタルで受けたい場合にはモードの変更が必要になります。(CC-Mode → マルチチャンネル)
また、そのモードに応じてアウトのアサインが変更されたりしますので、このあたりの柔軟性はちょっと犠牲になっている印象がありますね。
思った形が出来ないわけではありませんが、内部ルーティングの兼ね合いも有るようですので、マニュアルは必須かなぁと思います。
それとは別に、機器そのものの動作モードもありますので(AD/DA動作なのかDAC動作なのか等)、モードによって出来ることが変わってくるのも、ちょっと混乱する原因かと思います。
他のインターフェースではかなり柔軟かつ直感的に切り替えの出来るものもありますので、ちょっとお硬い感じは否めないです。
この部分については、DSDの対応や超ハイサンプリングの処理との物理的な兼ね合いもありますので、苦心しているところではないかなぁーと思いますけども。
なお、動作モードやアサインの切り替え等は、前項でご紹介したようにボタンに割り当て可能ですので、設定さえしてしまえば簡単にオペレート出来ますが、チャンネルの動作モードについては切り替わりませんので注意が必要です。
音質について
さあ、ここはおなじみの主観のゾーンですので、フーンって感じでお願いしますね!
音質と一言で言っても、スタジオでのモニター的な用途と、いわゆるリスニング的な用途など、用途によって求められる音の形は異なりますが、私の印象としてはどちらの用途にも耐えうるクオリティを持っていると思いました。
派手さはなく、そこまで硬くもないけれど、音像の見通しは良いので使いやすいという感じでしょうか。
ゴリゴリのモニター用よりは多少ソフトで耳馴染みは良い感触ですので、そういう意味でリスニング用途にも対応出来るかな~と思います。
なので、モニター用の機器だと音が硬くて嫌だなぁ…という方でも許せるかもしれません(笑)
明らかにわかるようなお化粧がされる感じもありませんので、リファレンスとして考えたときに、とりあえずこれを使っておけば問題ないよね、と言える機材に仕上がっていると思います。
まとめ
多チャンネルが必要ない環境や、モニター用のリファレンスD/Aを探している方は要チェックだと思います。
本体のサイズが小さいので、ラックマウントするとなるとちょっと微妙ですが(オプションの耳が必要)、手元に置いて使う場合はメリットになると思いますし、持ち運びも楽ちんですから、活躍の場はたくさん有るのではないかと思います。
一つ要望が有るとすると、PC側での操作が出来無いんですよね。
ドライバーもRMEの汎用ドライバーなので、設定項目はほとんどありません。
機能が盛りだくさんなこともあり、メニューも多岐に渡っているので、前面パネルからアクセスする際に、どうしてもちょっと迷いがちです。
基本的にテキストベースで選択していきますので、ある程度の前提知識も必要になってしまうんですよね。
スタンドアロンだけではなく、DAWのI/Oとして使用出来るわけなので、ソフト側から設定が出来ると助かるなぁと思ったことは1度や2度ではありませんでしたので、そちら側の進化を期待したいところですね。
とはいえ、この価格帯のインターフェースとしては抜群じゃないかと思いますので、しっかりしたものが欲しい方にはオススメ出来ると思います。
ちなみに…最近になってブラックモデルが出ていて悔しいですっ!(笑)
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